倉橋惣三は「保育の父」と言われた人です。
その著、「育ての心」は保育者のバイブルと言われ、私も31年間いつも傍において何度も読み返した本です。
 そして、読み返す度に、子どもらはなんと愛おしく、子育てはなんてすばらしいんだろうと思わせてくれ、何度読んでも、読むたびに新鮮な1冊です。
            育ての心(序)より・・・フレーベル館発行

 自ら育つものを育たせようとする心。それが育ての心である。   

世にこんな楽しい心があろうか。それは明るい世界である。温かい世界である。
育つものと育てるものとが、互いの結びつきに於いて相楽しんでいる心である。

 育ての心、そこには何の強要もない。無理もない。育つものの偉(おお)きな力を信頼し、敬重して、その発達の途に遵うて発達を遂げしめようとする。役目でもなく、義務でもなく、誰の心にも動く真情である。

 しかも、この真情が最も深く動くのは親である。次いで幼き子らの教育者である。そこには抱く我が子の成育がある。日々相触るる子等の生活がある。斯うも(こうも)自ら育とうとするものを前にして、育てずしてはいられなくなる心、それが親と教育者の最も貴い育ての心である。

 それにしても、育ての心は相手を育てるばかりではない。それによって自分も育てられてゆくのである。我が子を育てて自ら育つ親。子等の心を育てて自らの心も育つ教育者。育ての心は子どものためばかりではない。親と教育者とを育てる心である。